アグロエコロジーは、生きるために必要な「食」と「農」について一人ひとりがみずから考え、共に実践することで、未来に続き、未来を拓く運動を支えます。

アグロエコロジー (agroecology)を直訳すると農生態学。このため、生態系に配慮した農業⇒有機農業という意味に捉えられそうですが、アグロエコロジーにはもっと広い意味が込められています。
工業化された農業に対抗するオルタナティブとして、持続可能な農業をめざす環境運動・社会運動のなかで発展してきた概念なのです。

農業と生きものの未来

アグロエコロジーは研究者・実践者の専門性や経験をもとに、さまざまに意味づけられ、世界中で多方面から議論が重ねられてきました。時代や状況に応じて変化しています。

米国カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のグリースマン名誉教授(Stephen R. Gliessman)は、「緑の革命」(化学肥料と農薬の多用で発達した工業化された農業)に対する反省と、南米で目の当たりにした伝統農法の学びの上に、アグロエコロジーを「生態系の概念や原理を持続可能なフードシステムの設計と管理に応用する学問」と定義。生きものと生きものの関係に重きをおき、人の営みも生態系に含めたうえで、持続可能性(サステナビリティ)を論じています。

アグロエコロジーのねらい

アグロエコロジーは、「科学」(長く研究されている生態学や農学など)、「実践」(実際に行われてきた農業など)、「社会運動」(現実の暮らしをどのような視点で組み立てていくか)が相互に関わり、世界でさまざまな試みがなされています。
そうした多様な取り組みには、次のような共通項があります。

◎肥料・農薬等に依存せず、自然がもっている力を生かす農業、生態系のもつ調整機能を高める農業をすすめる。
◎科学的な知識と生産者の伝統的・地域的な知恵を組み合わせることで、農業の改革をめざす。
◎一人ひとりみずから考えることで、生産者とコミュニティに改革の力を与える。
◎畑から食卓まで、その間のすべてを含むフードシステム全体を見渡す。
◎食と農の工業化をすすめる社会的・経済的な権力に挑む。
◎ボトムアップ型のプロセスによって、地域の問題に適切な解決策を提供する。
◎フードシステムの社会的・経済的な面を重視し、食糧主権、なかでも女性、若者、先住民の権利を守る。

UCSCの事例

有機農場では、花と野菜が混植され、害虫と益虫、鳥や動物、人も共生するような生態系の営みを生かした農業をおこなっています。


ファーマーズマーケットやCSAにより、生産者と消費者は互いの顔が見える関係でつながっています。

サンタクルーズのファーマーズマーケット
UCSC学内のCSA

USSC内のLife Labでは、こどもの肥満、栄養過多など食の問題、未来の食の持続可能性を考え実践するプロブラムを提供しています。

大学内のモデルガーデン
地元小学校の校庭に広がるLife Labのガーデン

UCSCの学内にあるCAN (Community Agroecology Network)は、コーヒーのダイレクトフェアトレードをおこなっています。コーヒー販売によって生産者の食の権利を保障し、生活圏の生態系を守るコーヒー栽培を支えます。生産地における女性の格差を軽減するため、カフェを開く手助けをおこなうなど女性のエンパワメントを推進します。UCSCの学食やサンタクルーズにあるカフェでもコーヒーを提供。恵泉のオーガニックショップでもCANコーヒーを販売中です。

アグロエコロジーの考え方とLife Labの教育実践から影響を受けて

米国UCSCでは、アグロエコロジーの考えとともに、校内にあるLife Labが小学校のガーデン実践を発展させてきました。この教育活動は、「生きた実験室(Living Laboratory)」とも呼ばれ、あらゆる科目や生活の知恵を学ぶラーニングセンターの役割を果たしています。
Life Labのスローガンは「種から食卓まで(Seed to Table)」。身近な自然への好奇心を、ガーデンに主体的に関わることで、目覚めさせます。そのガーデンで、食に繋がる生態系の多様性や、仲間との繋がりを直接体験することで、持続可能な地球をつくる力を育むものです。

私たちLife Lab Tama(ライフラボ多摩)は、アグロエコロジーの考え方とLife Labの教育実践を参考にしながら、恵泉女学園大学が位置する多摩地域で持続可能なコミュニティづくりをすすめます。